更新日: 2024.10.04
オウンドメディアを運用する上で、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定は欠かせません。KPIを正しく設定し、定期的に評価・改善することで、オウンドメディアの価値を最大限に引き出すことができるのです。
この記事では、オウンドメディアのKPI設定における重要ポイントと、参考になる成功事例をご紹介します。
目次
オウンドメディアは、自社のブランディングや見込み客の獲得、顧客満足度の向上などを目的として運用されます。しかし、明確なKPIを設定しないまま記事を量産しても、本当の意味での成果は得られません。
適切なKPIを設定することで、目標達成に向けた施策の優先順位が明確になり、記事の品質や方向性を見直すきっかけになります。
また、チーム全体で目標を共有し、モチベーションを高められるほか、投資対効果(ROI)を測定し、予算配分の最適化につなげられるというメリットもあるのです。オウンドメディアの運用を始める前に、まずは自社のビジネスゴールに合致したKPIを設定しましょう。
オウンドメディアのKPIは多岐にわたりますが、代表的なものとして
PV(ページビュー)
UU(ユニークユーザー)
滞在時間
CVR(コンバージョン率)
SNSシェア数
上記5つが挙げられます。
PVは、ある一定期間内にウェブサイトのページが閲覧された総数を表します。オウンドメディアの記事がどの程度読まれているかを測定するための基本的な指標です。PVが高いほど、記事が多くの人に届いていることを示します。
ただし、PVは記事の閲覧数だけを表すため、記事の内容や質、読者の関心度合いまでは測れません。
また、1人の読者が同じ記事を複数回閲覧した場合、その分PVが増えるため、実際の読者数とは異なる点に注意が必要です。
サイト全体のPVを増やすには、SEO対策による流入数の増加や、読者のニーズに合った魅力的な記事の公開が効果的です。
UUは、ある一定期間内にオウンドメディアを訪れたユニークなユーザー数を表します。同一ユーザーが複数回訪問しても、1ユーザーとしてカウントされます。
オウンドメディアの実際の読者数や、記事のリーチ力を測定するのに適しています。
UUを増やすには、SEOによる新規読者の獲得や、ソーシャルメディアでの記事拡散、他サイトからの流入増加などの施策が有効です。
ただし、読者の質までは測れないため、ターゲットとする読者像に合致しているかどうかは別の指標で確認する必要があります。
滞在時間は、読者がオウンドメディアの記事を閲覧している時間の長さを表します。読者が記事に費やした時間が長いほど、記事の内容に興味を持ち、熱心に読んでいることを示唆しています。
滞在時間は、記事の質や読者の関心度合いを測定するのに適しています。
滞在時間を伸ばすには、読者の関心を引き付ける見出しや導入文、分かりやすく読みやすい文章、ビジュアル要素の活用などが効果的です。
また、記事の内容を充実させ、読者の疑問や悩みに対する具体的な解決策を提示することも重要です。
ただし、記事の内容や分量によって、適切な滞在時間は異なります。短い記事なら1分程度、長い記事なら5分以上が目安となります。
CVRは、オウンドメディアの記事を読んだ人のうち、目標とするアクション(資料請求、問い合わせ、商品購入など)を起こした人の割合を表します。
オウンドメディアの目的である見込み客の獲得や売上向上の状況を直接的に示す指標です。
CVRを高めるには、記事の内容と目標アクションを適切に連動させることが重要です。例えば、記事内に関連する資料のダウンロードリンクを設置したり、問い合わせフォームへの誘導を明確にしたりするなど、読者を次のアクションに自然と導くような工夫が必要です。
また、記事の内容が読者のニーズや関心に合致していること、読者に価値を提供できていることも、CVRを高めるための前提条件となります。
SNSシェア数は、オウンドメディアの記事がソーシャルメディア上で共有された数を表します。シェア数が多いほど、記事が読者から支持され、多くの人に拡散されていることを示します。
記事の話題性や読者の関心度合いを測定するのに適しています。
SNSシェア数を増やすには、読者が共感したり、役立つと感じたりするような記事を提供することが重要です。
また、記事にソーシャルシェアボタンを設置したり、積極的に記事を宣伝したりするなど、シェアしやすい環境を整えることも効果的です。
ただし、記事の拡散力は測れますが、実際にその記事を読んだ人の数や、記事が与えた影響までは測れません。シェア数の評価は、他のKPIと組み合わせて総合的に行う必要があります。
オウンドメディアの運用は、立ち上げ期、成長期、安定期の3つのフェーズに分けられます。それぞれのフェーズで重点的に取り組むべきKPIや目標値の設定は異なります。ここでは、各フェーズにおけるKPI設定の例をご紹介します。
立ち上げ期は、オウンドメディアの基盤を作る重要な時期です。この時期は、認知度の向上とコンテンツの充実に注力します。
・PV:月間1万PVを目指す。SEO対策と記事の定期的な公開に注力。
・UU:月間5,000UUを目指す。新規読者の獲得とリピーター化に注力。
・滞在時間:平均2分以上を目指す。読者のニーズに合った質の高い記事を提供。
・CVR:資料請求数月間10件を目指す。記事内に適切なCTAを設置。
・SNSシェア数:記事1本あたり平均10シェアを目指す。SNSでの記事拡散を積極的に実施。
成長期は、オウンドメディアの認知度が高まり、読者数が増加する時期です。この時期は、顧客満足度の向上と見込み客の獲得に注力します。
・PV:月間5万PVを目指す。記事の質と量の向上に注力。
・UU:月間3万UUを目指す。リピーターの定着と新規読者の獲得に注力。
・滞在時間:平均3分以上を目指す。読者の関心を引き付ける記事内容の充実に注力。
・CVR:資料請求数月間50件を目指す。記事とCTAの連動性を強化。
・SNSシェア数:記事1本あたり平均30シェアを目指す。読者が共感・信頼できる記事を提供。
安定期は、オウンドメディアが一定の読者数を維持し、安定的に運用されている時期です。この時期は、コンバージョンの最適化と運用の効率化に注力します。
・PV:月間10万PVを維持。記事の質の維持と更新頻度の最適化に注力。
・UU:月間5万UUを維持。読者の特性やニーズに応じて分類することに注力
・滞在時間:平均4分以上を維持。読者の関心に合わせた記事内容の最適化に注力。
・CVR:資料請求数月間100件を目指す。記事とランディングページの最適化に注力。
・SNSシェア数:記事1本あたり平均50シェアを目指す。読者コミュニティの育成と活性化に注力。
以上、オウンドメディアの運用フェーズ別のKPI設定例をご紹介しました。ただし、これらの数値はあくまで一例であり、自社のオウンドメディアの状況に合わせて、適切なKPIと目標値を設定する必要があります。
オウンドメディアのKPIを適切に設定するには、以下の方法で行うといいでしょう。
まず、オウンドメディア運用の目的を具体的に定義し、ビジネスゴールを明確化します。
「新規見込み客の獲得」「ブランド認知度の向上」「顧客満足度の向上」など、明確な目標を設定します。目標は可能な限り数値化し、期限を設けることが重要です。
例えば、「半年後までに月間新規見込み客を100件獲得する」といった具合に、具体的で測定可能な目標を立てます。漠然とした目標では、KPIの設定や施策の実行が難しくなるので注意が必要です。
ビジネスゴールを設定する際は、会社の経営層やマーケティング部門と連携し、オウンドメディアの役割を明確にしておくことも大切です。
オウンドメディアのターゲットとなる読者像を詳細に描いたペルソナを設定します。年齢、性別、職業、関心事、悩み、課題など、具体的な属性を洗い出します。
ペルソナを明確にすることで、読者のニーズに合った記事の企画・制作が可能になります。
ペルソナ設定の際は、自社の商品やサービスの特性を踏まえ、どのような人々に訴求していくべきかを検討します。既存顧客のデータや、アンケート調査、インタビューなどを活用し、リアリティのあるペルソナを描くことが重要です。
また、オウンドメディアの運用が進む中で、実際の読者像とペルソナにズレが生じていないかを定期的にチェックし、必要に応じて修正を加えていきます。
ビジネスゴールとオウンドメディアのKPIを紐づけ、体系立てて整理したKPIツリーを作成します。ゴールを達成するために、どのKPIが重要で、それぞれのKPIがどのように関連しているかを明らかにします。
例えば、「新規見込み客の獲得」というゴールに対して、「記事の閲覧数(PV)」「問い合わせ数(CVR)」「資料請求数(CVR)」などのKPIを設定し、それぞれのKPIがゴール達成にどのように寄与するかを整理します。
KPIツリーを作成することで、オウンドメディア運用の全体像が可視化され、施策の優先順位を判断しやすくなります。また、チーム内での共通理解を促し、目標達成に向けて一丸となって取り組むことができます。
オウンドメディアの成功に不可欠なKPIから順に優先度を設定していきます。すべてのKPIを同時に追求するのは非効率的なので、重要度の高いものから順に取り組みます。優先度の判断基準は、ビジネスへのインパクト、改善の難易度、施策の実現可能性などを考慮します。
例えば、「CVR」は直接的な売上貢献度が高いため、優先度が高いと判断できます。一方、「SNSシェア数」は間接的な効果しか期待できないため、優先度は相対的に低くなるでしょう。
ただし、KPIの優先度は固定的なものではありません。オウンドメディアの運用フェーズや、ビジネス環境の変化に応じて、柔軟に見直していくことが大切です。
優先度の高いKPIについては、達成すべき数値目標を設定します。目標値は、過去の実績や業界平均、競合他社のデータなどを参考に、現実的かつチャレンジングなものを設定します。
例えば、「月間PV10万件」「CVR3%」といった具合に、具体的な数字で目標を表します。目標値は、オウンドメディアの運用フェーズやビジネス環境に応じて、適宜見直しが必要です。
また、目標達成に向けた計画を立て、定期的に進捗をチェックすることも重要です。目標との乖離が大きい場合は、原因を分析し、施策の修正や追加を検討します。
取得したデータを分析し、KPIの達成状況や施策の効果を評価します。目標に対して順調に推移しているか、改善の余地はないかを検討します。
オウンドメディアの運用は、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していくことが重要です。KPIの達成状況だけでなく、読者の反応や行動変化なども分析し、よりよいコンテンツ作りにつなげていきましょう。
また、オウンドメディアを取り巻く環境の変化にも注意が必要です。SEOのアルゴリズム変更や、競合他社の動向など、外部要因の影響を受ける可能性があります。柔軟に対応し、必要な改善を速やかに実行することが求められます。
オウンドメディア運用は一朝一夕に成果が出るものではありません。KPIを軸に PDCAサイクルを回し、地道にブラッシュアップしていくことが重要です。
オウンドメディアの運用において、適切なKPI設定は欠かせません。KPIを設定することで、目標達成に向けた施策の優先順位が明確になり、記事の品質や方向性を見直すきっかけになるのです。
また、オウンドメディアの運用フェーズ重点的に取り組むべきKPIや目標値は異なります。フェーズの移行に合わせて、徐々にKPIの重点を変化させていくことが求められます。
KPIを適切に設定するためには、ビジネスゴールの明確化、ペルソナの設定、KPIツリーの作成、KPIの優先順位付け、数値目標の設定、KPIの見直しと改善を行うことが有効です。
自社のオウンドメディアに最適なKPIを設定し、継続的な改善に取り組んでいきましょう。
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監修者プロフィール
木島 怜史
株式会社センタード WEBマーケティング本部 エキスパート
前職のWEB営業経験を経て、株式会社センタード入社。現在WEBマーケティング本部にて技術統括。 WEBマーケティングの全体戦略設計からWEB広告、SEO、WEBサイトの課題抽出・改善立案までを管轄。 顧客目標としてWEBの目標達成はあくまで通過点と捉え、部分最適化、全体最適化を経てビジネス改善を目指す。 Web Designing誌に「ユーザーの行動特性を捉えたイベント集客施策」「Web戦略全体の視点から広告予算を考察」など寄稿。 「WEB改善の流れがわかる!目標設定とPDCAの考え方講座」など多数のセミナー講師も務める。 ウェブ解析士、GAIQ、Google広告等各種資格保有。業界歴10年以上。
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