サーチリフトとは何か?意味・仕組み・効果を徹底解説

公開日: 2025.09.05

デジタル広告の運用が当たり前となった今、バナー広告や動画広告などを出稿しても、「本当に効果があったのか」と疑問に思う担当者は多いのではないでしょうか。直接クリックされなくても、広告がユーザーの態度変容や検索行動に影響を与えている可能性は十分にあります。

その“間接的な広告効果”を可視化する手法が「サーチリフト」です。

広告を見た後に、ユーザーがブランド名や商品名を検索する行動(=指名検索)を起こすかどうかを測定し、広告の貢献度を分析するのがこの手法の特徴です。サーチリフトは、認知向上や検討フェーズにあるユーザーへの影響を評価する上で、非常に有効な指標として注目されています。

本記事では、サーチリフトの意味・仕組み・測定方法・他手法との違い・活用法までを徹底的に解説します。読み終える頃には、「この広告は効いているのか?」という悩みに対し、データを根拠に判断できる視点が得られるでしょう。

サーチリフトとは何か【定義と基本概念】

サーチリフトの定義

サーチリフトとは、広告を見たユーザーがその後に行う検索行動にどの程度影響を与えたかを測定する指標です。

特に「ブランド名」や「商品名」などの指名検索がどれほど増加したかに注目し、広告の間接的な効果を可視化します。クリックやコンバージョンといった直接的な成果では測れない広告の認知効果や検討促進効果を数値として把握することができるため、広告の評価精度を高める手法として活用されています。

類似用語との違い(ブランドリフトなど)

サーチリフトと混同されやすい用語に「ブランドリフト」がありますが、両者は測定対象が異なります。

ブランドリフトは、広告によってユーザーの「認知度」や「購買意欲」といった態度変容を調査アンケートなどで測るのに対し、サーチリフトは実際の検索行動という行動データをもとに効果を測定します。このため、より客観的で実行可能性のある改善に結びつけやすい点が特徴です。

なぜ今注目されているのか

サードパーティCookieの規制強化やプライバシー保護の観点から、従来のターゲティング広告やトラッキングによる効果測定が難しくなっています。

こうした背景の中、ユーザーの行動ログを活用したサーチリフトは、比較的正確に広告の影響を分析できる手法として再評価されています。また、ブランド認知や検索需要の醸成といった上流効果の可視化が求められる中で、マーケティング戦略の指針として導入されるケースが増えています。

サーチリフトの仕組み

広告表示と検索行動の因果関係

サーチリフトは、広告がユーザーの検索行動に与えた影響(因果関係)を検証する手法です。

具体的には、広告に接触したユーザー群と、広告に接触していないユーザー群を比較し、どれだけ指名検索が増えたかを分析します。

たとえば、あるブランドのバナー広告を表示したユーザーが、その後Googleなどでブランド名を検索する割合が広告非接触層より高ければ、広告が検索行動を促した=効果があったと判断できます。

行動ベースで効果を可視化できる点が、サーチリフトの特徴です。

どのように効果を測定するのか

サーチリフトの測定には、一般的にA/Bテストの考え方が用いられます。

広告を表示した「テスト群」と、広告を表示しなかった「コントロール群」に分け、両者の指名検索数を比較します。

検索クエリの一致率や検索頻度、検索後のサイト訪問率などを定量的に分析し、「広告がなければ発生しなかった検索」がどれだけあったかを推定します。DSPやDMPと連携したログデータ分析を活用することで、高い精度でリフト値を算出することが可能です。

使用されるデータと指標

サーチリフトの測定では、主に以下のデータが使用されます。

  • 広告表示(インプレッション)ログ
  • ユーザーの検索クエリ履歴
  • 指名検索に該当するキーワードリスト
  • テスト群/コントロール群のユーザー分布

指標としては「サーチリフト値(Search Lift Rate)」が用いられ、これは広告接触群の検索率と非接触群の差分をパーセンテージで表したものです。これにより、広告がユーザーの検索行動に与えた影響度を直感的に把握できます。

サーチリフトのメリット・効果

間接効果の可視化

サーチリフトの最大のメリットは、広告の間接的な効果を可視化できる点です。

通常の広告指標では、クリックやコンバージョンといった直接成果のみが重視されがちですが、実際には広告に触れた後に検索し、別経路で購入に至るケースも少なくありません。

サーチリフトを活用すれば、「検索」という行動を通じて広告の影響を測定できるため、従来見逃されていた効果を数値化し、より正確な広告評価が可能になります。

広告の改善ポイントが明確になる

サーチリフトの測定結果からは、ユーザーに響く広告の要素を把握することができます。

たとえば、特定のクリエイティブや広告フォーマット、配信面においてリフト値が高ければ、その要素が検索行動を促進していることが分かります。逆に効果の薄い施策も明らかになるため、PDCAを回す上での貴重な指標となります。

また、ユーザーが検索したキーワードの傾向を分析することで、広告コピーやLP内容の改善にもつなげることが可能です。

予算配分の最適化に活用できる

サーチリフトの結果を活用すれば、広告予算の配分最適化が可能になります。

たとえば、認知系広告で高いサーチリフト効果が得られた媒体やクリエイティブには予算を増額し、逆に効果の低い施策には再検討の余地があると判断できます。これにより、「なんとなくの感覚」で予算を振り分けるのではなく、データに基づいた戦略的な予算配分が実現できます。

広告費のROI最大化に向けた合理的な判断材料となるのが、サーチリフトの大きな価値です。

他の広告手法との比較

リターゲティングとの違い

リターゲティングは、過去に自社サイトを訪問したユーザーに再度広告を表示し、再訪や購入を促す手法です。

一方、サーチリフトは広告接触によって新たに検索行動が生まれたかを測定するため、そもそも自社に接触していなかった潜在層にも効果を可視化できます。リターゲティングが「追いかける」施策であるのに対し、サーチリフトは「検索を促す」施策の効果を評価するものであり、目的も対象も異なることを理解する必要があります。

ブランドリフトとの違い

ブランドリフトは、広告によるブランド認知や好意度、購入意向の変化を調査ベースで測定する手法です。

ユーザーに対してアンケートを実施し、「広告を見た後にブランドへの印象がどう変わったか」といった定性的データを収集します。一方で、サーチリフトは検索という実際のユーザー行動を基に分析するため、より客観的かつ行動結果に直結する評価が可能です。両者は補完関係にあり、上流と中間地点の効果を測る際に使い分けるのが理想です。

アトリビューション分析との関係性

アトリビューション分析とは、ユーザーがコンバージョンに至るまでの複数接点に対し、それぞれの貢献度を分析する手法です。

検索広告、SNS、ディスプレイ広告などの役割を可視化し、施策間の相乗効果や最適なチャネル配分を導きます。サーチリフトは、その中でも「広告接触が検索という行動にどれほどつながったか」をピンポイントで測るため、アトリビューション分析の中の“検索への波及効果”に特化した指標といえます。両者を併用することで、広告の成果を多面的に評価できるようになります。

サーチリフトの導入方法と活用の流れ

導入の前提条件

サーチリフトを導入するには、まず広告のインプレッションデータと検索データを紐づけられる環境が必要です。

主にDSP(Demand Side Platform)やDMP(Data Management Platform)などのプラットフォームと連携し、ユーザーの広告接触履歴とその後の検索行動を追跡できる体制を整えます。また、十分な母数がないと正確なリフト値が出せないため、一定以上の広告配信量・ユーザーデータの蓄積があることも前提条件となります。

一般的な導入ステップ

サーチリフトの導入は以下のような流れで進行します。

  1. 目的設定
     例:「広告によるブランド検索の増加を測定したい」など

  2. 指名検索キーワードの設定
     ブランド名や商品名など、リフトを測定したい検索語句を定義

  3. テスト群とコントロール群の分割
     広告接触の有無でユーザーを分ける

  4. データ収集と測定
     一定期間のインプレッションおよび検索データを取得し、検索率の差分を算出

  5. 分析とレポート化
     リフト率、検索量、変化傾向などをレポートにまとめて活用方針を検討

このように、定量的な評価プロセスが組み込まれている点が特徴です。

測定後のアクションプラン例

サーチリフトの結果を受けては、効果の高い広告配信面やクリエイティブへの集中投資が可能になります。

たとえば、特定の媒体で高いサーチリフトが見られた場合、その媒体への配信比率を高めたり、同様のユーザー層への配信を強化するなど、施策の最適化が可能です。また、検索されたキーワードの分析から、検索広告やコンテンツ施策の方向性を修正するヒントも得られるでしょう。

効果的な運用のポイント

広告配信面の選定

サーチリフトの成果を最大化するには、広告の配信面(媒体や掲載枠)の選定が重要です。

ユーザーの興味関心や購買ステージに応じて、最適なメディアに配信することで、より検索行動を促しやすくなります。たとえば、認知拡大を目的とするならニュースサイトや動画メディア、比較検討フェーズでは専門情報サイトやレビュー系メディアなどが有効です。「誰に」「どこで」届けるかの設計が、リフト効果に直結します。

KPIの設定と可視化

サーチリフトを活用する際は、KPI(重要業績評価指標)の明確化が欠かせません。

代表的な指標には「サーチリフト率」「指名検索数の変化」「ブランド検索の割合」などがあります。これらを定期的にモニタリングし、広告の貢献度を可視化することで、成果の良し悪しを判断できます。また、KPIはマーケティング全体の目標と連動させることで、施策全体の整合性を保ちながら運用できます。

PDCAの回し方

サーチリフトは単発で終わらせず、継続的にPDCAサイクルを回すことが重要です。

Plan(仮説設計)→ Do(広告配信とデータ収集)→ Check(効果測定とリフト分析)→ Act(改善案の実施)を繰り返すことで、広告施策の精度が高まります。特に、検索されたキーワードの内容を深掘りすることで、次回のコピー改善や訴求内容の修正に役立ちます。定量と定性を組み合わせた運用が成果の鍵となります。

サーチリフトに向いている業種・ビジネス

BtoC向け商材(例:通販、アパレルなど)

サーチリフトは、消費者向け(BtoC)商材との相性が非常に高いです。

特に通販やアパレル、コスメ、飲料など、比較的単価が低く、認知から購入までのスピードが早い商材では、広告接触後の検索行動が明確に現れやすいため、効果を可視化しやすい傾向があります。また、シーズン性や新商品の訴求にも活用しやすく、キャンペーンの評価にも適しています。大量のユーザー接触が可能な商品カテゴリでは、測定精度も高まるという利点があります。

高関与商材(例:自動車、不動産など)

一方で、高関与商材(検討期間が長く、購入に慎重を要する商品)にもサーチリフトは有効です。

自動車や住宅、保険、金融サービスなどは、広告を見た後に検索し、情報収集や比較を行う傾向が強いため、検索行動の変化が広告の影響を示す重要な指標となります。高額商材は直接的なCVに結びつきにくいため、中間地点での効果を測る手段として、サーチリフトは重宝されます。 認知から検討フェーズに移行する際の「態度変容」を捉えるうえで、極めて有効なアプローチです。

サーチリフトの注意点・限界

効果が出にくいケース

サーチリフトは万能ではなく、効果が出にくいケースも存在します。

たとえば、認知度がすでに高いブランドや商材の場合、広告が検索行動に与える影響が限定的となるため、リフト効果が測定しにくくなります。

また、単発的・短期間の広告施策では、データ量が不足して統計的に有意な結果が得られない可能性もあります。

十分な配信ボリュームと検証期間を確保することが成功の前提です。

計測における誤差・注意点

サーチリフトは検索行動を基にした分析であるため、測定ロジックやデータの取り扱いに注意が必要です。

たとえば、テスト群とコントロール群のユーザー属性に偏りがあると、純粋な広告効果ではなく「元々の関心度の違い」がリフトとして現れてしまうリスクがあります。また、検索されたキーワードが本当に広告の影響によるものかどうかの判定も難しいケースがあります。

さらに、Cookie制限やブラウザごとの挙動差によって、ユーザーの行動トラッキングが不完全になることも。こうした点を踏まえ、結果の解釈には慎重さが求められます。測定パートナーやプラットフォームの信頼性、分析設計の透明性も重要な評価軸です。

サーチリフトを提案されたらどう判断すべきか

サーチリフトの導入を提案された際に重要なのは、「自社の目的やフェーズに合っているか」を見極めることです。

たとえば、ブランド認知の拡大を目的とした広告施策を実施している場合や、ユーザーの検索行動を評価軸にしたい場合には、サーチリフトは非常に有効です。一方、即時のコンバージョンを重視する短期的なキャンペーンでは、その効果を評価しにくいこともあります。

また、広告配信量が少ない、もしくはブランド名がすでに広く知られている場合は、リフト効果が数値として現れにくいため注意が必要です。

十分なボリュームと検証体制があるかどうか、測定ロジックの透明性が確保されているかも確認すべきポイントです。提案を受けた際は、施策の目的・KPIとの整合性を踏まえて、冷静に導入の可否を判断しましょう。

まとめ:サーチリフトを理解し、賢く広告運用を

デジタル広告の効果測定は、これまで「クリック」や「コンバージョン」などの直接的な成果に偏りがちでした。しかし、ユーザーの実際の購買行動には、その前段階として「検索」が介在していることが多くあります。サーチリフトは、その検索行動に着目することで、広告の間接的な効果を可視化できる強力な手法です。

本記事で解説した通り、サーチリフトは単なる効果測定の手段にとどまらず、広告戦略の立案や改善、予算配分の最適化にも活用できます。また、他の広告指標や施策との併用により、マーケティング全体の精度を高めることが可能です。

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監修者プロフィール

平岡 悟

平岡 悟

株式会社センタード 代表取締役

WEBマーケティング歴25年。セプテーニとSBIホールディングスのJVでの金融広告事業をはじめ不動産・人材・旅行・化粧品等多業界広告での経験を経て2010年に株式会社センタードを設立。クライアントワークでWEBマーケティングの全体戦略設計からWEB広告、SEO、WEBサイトの改善設計まで、自社ではSFA/MAを活用したインバウンドマーケティングからインサイドセールスまでを統括。現在も実践の最前線でAIでWEBマーケティングを最適化しサービス強化。1,200社以上の実績と顧客満足度96%、顧客推奨度90%を実現。
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